インディアナポリス研究会

中年の主張

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<1/2/3/4/5/6/7/8/9/10/11/…>

あの頃、君はこう見られていた。  タイトルを変えてみました。まあ、さすがに「初老の呻き」というタイトルも如何なものかと反省致しまして、原点に返り、「面白コラム」に変えてみました。書き手側から、「面白い」という感想を押し付けるハタ迷惑なタイトルです。

 大谷が活躍をしている。二刀流と一刀流、どちらの方が、大谷本人にとってチームにとって得策なのか、私は、そうして多くの人が判断付きかねているだろうが、このメジャー入り以後数ヶ月の大谷の活躍でではっきりしたことが一つだけある。それは、「二刀流、結構イケる」である。

 大谷が今シーズン、どのような数字を残すのか、そうして如何なるキャリアを得るのか無論全く不明であるが、とりあえず、ここ数ヶ月、あるいは日本時代の数年も含めた、ここ数年の大谷の活躍で明白になったのは、二刀流というのが、ここ100年近く信じられてきたほどナンセンスな所業では無かったという事である。これは、はっきり明白になったと思う。

 私が子供の頃、それも野球を覚えたての10歳くらいの頃、「なぜ、高校野球ではエースで4番があるのに、プロ野球では無いのだろう。」といういかにも子供らしい素朴な疑問を抱いていたのであるが、無論、子供の私には、この問題を解決できる知能や経験がある訳もなく、また、大人になったとしても、それに対する反証ないし証明は、プロ野球の監督になり、理解あるチームを得て、そして何よりそれを実験しえる大谷のようなプレイヤーに出会わなくてはならないのだから、私の人生には、その検証は土台無理な話であった。

 しかし、それは大谷の登場により、完全に反証された。「二刀流、結構イケる」、である。

 二刀流に対する否定論の根拠として最大だったものは、それはおそらく「疲労」、ピッチャーをやりつつ、その合間にバッターもすると、疲労が増して、バッティング、ピッチング双方に影響が出るから、二刀流は無理という論理だったと思う。
 しかし、この論理は、結論から云うと、完全に否定された。先発ピッチャーが、その登板の合間に数試合、DHや外野手をしたところで、疲労度はほとんど変わらなかった。まあ、登板の合間にキャッチャーをするのは、さすがに疲労すると思われるが、DHや外野手、あるいは内野手をしても、ピッチングに影響するほど、疲労はしなかった。大谷が他の選手に比べて100倍くらいスタミナがあるとなれば、話はちょっと変わるであろうが、さすがにそこまでの差は無いであろう。調べた訳では無いけれど。

 また、二刀流否定の、もう一つの論拠として挙げられていたのが、練習量の問題であろうが、これこそ個人差年齢差があるので一概には論じられない。少ない練習量でも活躍する者は活躍するし、豊富な練習量でも活躍しない者は活躍しない。少なくとも、大谷は、この練習量で活躍できている訳である。

 と、大谷がこのような明々白々な結論を出してしまえば、いままでの二刀流否定論は一体何だったのかという事になる。しかも、それが日米双方のプロ野球で100年近く信じられてきた訳である。ベーブ・ルースがピッチャーを辞めた理由は、結局何だったのだろう。案外、「ピッチング、ダリ〜。」ぐらいの理由だったのかもしれない。

 しかし、この100年の迷信も、今や完全に消し飛んでしまったので、これからは、ピッチャーがバッティング練習をする事、あるいは逆にバッターがピッチング練習をする事は、ナンセンスではなくなり、むしろ推奨されるであろう。バッティングの良いピッチャーはどしどしラインアップに加えるべきだし、ピッチングの良いバッターはどんどん登板させるべきであろう。特に大差の付いたゲームなどは、ブルペンは使わずに、野手に投げさせるべきという方向に行くかもしれない。おそらく、野手に投げさせても、そこそこ抑えるであろうし、バッターとしても、そんなゲームは早くゲームを終わらせてセックスでもしたいだろうから、ゲームがいつまでたっても終了しないなんて事な絶対ないであろう。

 勿論、大谷が今後どのようなキャリアを積むのかは、それは分からない。案外早い段階で二刀流を辞めてしまうかもしれない。しかし、ここ数ヶ月の大谷の活躍で、二刀流不可能の迷信は完全に崩れ去ったと思う。1年後2年後は、さすがに厳しいだろうが、10年後はアジア・アメリカ両地域で、二刀流が数多く誕生するであろう。

 まあ、勿論、今回証明されたのは、二刀流が物理的に可能という事だけであって、それが野球というゲームにおいて、チームにとって、あるいはプレイヤーにとって有効かは証明されたわけではない。もっとも、その証明は不可能であろう。同一選手の、同一条件下における一刀流と二刀流の生産性の違いなど、調べようがないからである。仮に調べえたところで、あからさまな違いが出ればともかく、微妙な違い、例えば、一刀流は500ホームラン、二刀流は200ホームラン&100勝みたいな結果が出てしまった場合、いくら検討しても結論は出し得ないだろう。

 ただ、いずれにしても、二刀流が物理的に可能という事は、これで完全に証明されてしまった訳である。私は、数年前、フットボールに比べて、野球やバスケットボールは、ここ30年くらい、戦力的戦術的な大きな変更はないと書いたけれども、この二刀流は、戦術的にはともかく、戦略的には、それこそ100年振りの改革になると思う。特にロースター枠の少ないメジャーリーグでは大きな改革になると思う。そういった、謂わば大きな改革、百年近く続いた迷信が崩れ去るような変化、革命の場にリアルタイムで関われた私たちは大変幸運だと思う。大きな偶然が作用したとはいえ、日本ハム球団、栗山監督、そうして何より大谷投手兼野手に感謝せねばなるまい。

 最近、囲碁や将棋の世界ではAIの登場によって、プロ棋士達が常識としていた戦略や戦術が根底から揺さぶられている。それらはこの大谷のケースとはちょっと違うかもしれないけれども、専門家の常識なんていうのは案外そんなものなんだなと、今回の大谷やAIの活躍で私は痛感した。しかも、それが100年も続いてしまうのである。よく考え、よく調べてから、結論は出さねばならない。


 と、ここまで来てから、いよいよ本題に入るのであるが、それはNFLのドラフトの話である。ドラフトも終わり、各チームのファンは自チームが指名した選手に一喜一憂しているころであろうが(もう、してないか。)、その一喜一憂に冷や水を浴びせる新企画、題して「あの頃、君はこう見られていた。」。

 つまり、現役選手あるいは引退選手のドラフト時の評価は如何なものであったか、という、謂わばゲス企画である。古い雑誌を読むと、その記事のトンチンカン振りに現代に生きる我々は思わず笑ってしまうものである。例えば、1970年代の経済誌の主なテーマはインフレであった。インフレ回避のために識者は知恵を絞っていた。まあ、バブルもひとつのインフレちゃあインフレではあるが。また、1970年代の児童誌の環境オカルト問題のメインテーマは氷河期であった。

 とまあ、人間の予想というものが如何にいい加減なものであるかは皆様も重々承知であろうが、それをNFL選手で調べて、笑って、もとい反省しようというのがこの企画「あの頃、君はこう見られていた。」の主旨である。おっ、大谷の記事のラスト、「よく考え、よく調べてから、結論は出さねばならない。」に無理矢理リンクしたぞ。

 んで、その第1弾はジョセフ・アダイである。後期ペイトン・マニング時代のコルツファン以外には分かりにくい選手かもしれないが、後期ペイトン・マニング時代のコルツファンにとっては忘れがたい選手でもあるし、何より非常に特徴のはっきりしたプレイヤーであり、第1弾には適当であると思われるので、ここに取り上げてみた。

 テキストは、プロフットボール・ウィークリーの2006年版のドラフトガイドである。そこに掲載されているアダイのスカウティングレポートの全文をここに訳出しよう。私の拙い英語力での翻訳なので、間違いはご堪忍を。


 ジョセフ・アダイ RB LSU 5−11 210パウンド 40ヤード:4.41 2巡予想

 【長所】
 きわめて多彩。大きな足と強い腰、成長の余地のある体格がある。体をうまく使って走り、インサイドに体をぶつける強さがある。スロットにラインアップして、ルートランナーとしてオープンにでるテクニックもある。きわめて優れたハンドがあり、ボールを簡単に捕る。堅実で、フェイスアップなブロッカーであり、ブリッツを素早く察知してピックアップできる。足をとどめ、踏ん張り、自分の担当のパスラッシャーを止めることができる。スペシャルチーマーとしての才能がある。非常によくコーチされている。汚れ仕事をすべて請け負う仕事人である。シニアになると、ランは強くなり、タックルをブレイクし始め、ピーチボウルで活躍した。

 【短所】
 スピード的には厳しく、クリエイティビティはあまり無い。何度か膝をケガしており、鍵を与えられているにもかかわらず(何らかの慣用句であろうが、私には意味が良く取れない。原文は、「when he's been given the keys」)、健康でいられなかった。体格的に劣り、消耗が早い。天性のランスキルはなく、直接的なコンタクトを避けるのは上手くない。

 【結論】
 アダイは一級品とは言い難く、プロの真のスターターにはなれないであろう。しかしながら、バックアップとしてチームが彼に求める事はすべて出来、サードダウンに必須のハンドとブロック能力がある。1999年全体46位でLSUからドラフトされたケビン・フォーク同様、アダイは彼の正しい使い方を知るチームにとって特別なロールプレイヤーとなるであろう。彼はフォークのようにリターナーとして完成されている訳では無いが、より大きくより早く、より多くの長所がある。万能選手であるが、一芸特化型ではない。


 うん、完璧。まったくもって、そのとーり。「ドラフト時の評価と実際は違った」なのが本欄の主旨の予定であったが、一発目から大失敗。完璧なスカウティングレポートである。一部のスキも無く、アダイの能力、そうして未来を説明している。「正鵠を得る」とは、まさしくこのスカウティングレポートの事を云うのであろう。とりわけ、結論の項にある「アダイは彼の正しい使い方を知るチームにとって特別なロールプレイヤーとなるだろう。」などは、まったくもって、そのとーり、唸るしかない。当時のコルツこそ、アダイの正しい使い方を知るチーム、もしかしたら唯一のチームだったかもしれない。つか、マニング特化型ランニングバックとも云える。

 「結論」の最後の一文に「万能選手であるが、一芸特化型ではない。」とあるけれど、ある意味、アダイは究極の一芸特化型ランニングバック、特定選手特化型ランニングバックだったのかもしれない。ちなみに、この「万能選手であるが、一芸特化型ではない。」というのは、原文では「a jack of all trades、master of none」というベタな慣用句である。そのまま「器用貧乏」と訳してもつまらないので、以上のように訳してみました。

 つかまあ、当時のポリアンはよくこんな選手を1巡30位で指名したな。今から考えると、2巡3巡でも指名出来たような気がする。カレッジ最終年の2005年では163回781ヤードしか走っていねーし。もちろん、コルツにとっては掛け替えの無い選手になる訳だけど。

 あとまあ、これは以前にもどこかで書いたが、このアダイのような選手を、この2006年の時点で作り上げていたニック・セイバンの先見性である。ブリッツパッケージが複雑化し、ブリッツピックがRBの大きな仕事になるのは2010年前後であろうから、まさしく時代の一歩先を行く戦略眼である。
 ちなみに、この年のRBの最大の大物は、申すまでもなくレジー・ブッシュであるが、このブッシュが時代に一歩遅れた感があったのに比較すると、このニック・セイバンの先見性はますます際立つ。

 また、話はちょっと逸れるが、このニック・セイバンはその後、ドルフィンズを経て、アラバマ大学のHCに就任、NFL選手を大量生産する訳であるが、どういう訳か、それらにQBはいない。マッキャロンやマッケロイなどもいるにはいるが、下位指名選手である。これは偶々なのかもしれないけれど、私は偶々ではないと思っている。疑っている。おそらくニック・セイバンはカレッジ・レベルではQBを重視していないように思う。QB中心のチーム作りはしていないのだと思う。そうして、それはもしかしたら盟友ベリチックも同じなのかもしれない、とコワい想像を私はしたりしなかったりしている。

 一発目はこれで終わりにして、次回は、ジェッツファンおよびカージナルスファン注目のマット・ライナートを予定しておりま〜す。

                                     2018/5/11(水)

 そして、第2回目は、既報どおりマット・ライナート。


 マット・ライナート QB USC 6−4 224パウンド 40ヤード:4.9 1巡予想

 【長所】
 プロスタイルのNFLのオフェンスを熟知しており、どこからプレッシャーが来るのかについて優れて察知できる。シニア時代、オーディブルの権利を与えられている。冷静沈着であり、ビッグゲームの重圧下でも対処できることを証明した。非常に捕りやすいボールを投げ、レシーバーのブレイクを予想できる。フィールド全体を見渡し、ショートにもディープにも正確に投げられる。クラッチなシーンでも仕事を完遂した、証明済みの勝者であり強靭な競争者である。

 【短所】
 肩が素晴らしく強い訳ではなく、優れたモビリティもなく、あたかも泥濘にはまるかのように追い込まれる。強いプレッシャーを受け、投げるために足をリセットせねばならなかった対ノートルダム戦では平凡な出来だった。カレッジフットボール界において、おそらく最高のオフェンシブラインの下で、そうして大きくシェアハンドなレシーバーたち、そうしておそらく全フットボール界において最高のバックフィールド陣とともにプレイしているので、彼の生産性は人為的に膨らまされている。きわめて痩せ型であり、左肩(投げる方)を二度手術している。彼のブラインドサイドを守るために、そのプロテクトを右側に回すオフェンスが要求される。

 【結論】
 ライナートにトップレベルの肩は無く、エリートクォーターバックには決してなれないであろう。彼の周囲にいたUSCのタレントたちがグットクォーターバックをグレイトに見せていたのであろうが、スカウトたちは過剰分析に巻き込まれてはならない。ライナートは非常に洗練されており、きわめて賢く、熟練し、信頼できる。彼は彼の無形の力、フットボールの知性と正確性により、トップスポットを争えるであろう。



 ってな感じである。ネタ元はアダイと同じく、プロフットボール・ウィークリーの2006年版のドラフトガイドである。

 ざっくり要約すると、「運動能力的・体格的には不満は残るが、技術的精神的には合格点。」みたいな感じであろうか。かつて、どこかの記事でチラ読みした、「性格的な問題がある」みたいな指摘はどこにもない。私の記憶違いか。

 ただまあ、「運動能力的・体格的には不満は残るが、技術的精神的には合格点。」ではあるが、逆に云えば、「技術的精神的には合格点ではあるが、運動能力的・体格的には不満は残る。」とも読めなくはない。「ひとつ間違えたら、優良バックアップ止まり。」という一文も、何とはなしに透けて見えなくもない。って、それはうがち過ぎか。

 ちなみに、結論の項目にある「スカウトたちは過剰分析に巻き込まれてはならない。」は、原文では「but scouts should not get too caught up in overanalyzing.」であるが、私には意味が良く取れなかった。「チームメイトに恵まれていたから、過大評価されている。」とも読めるし、「チームメイトに恵まれていたから、過大評価されているが、そこを重視しすぎてはいけない。」とも読める。どっち。ま、いっか。

 もっとも、このライナートに関しては、そのプレイ振りをほとんど見た事はないので、この文章の価値が私には判断できない。というか、QBの評価に関しては、私も何だかんだでNFLを15年近く見てきているが、正直いまだによく分からない。特に現場の判断はまったく分からない。

 中でも最も分からなかったのは、あのティム・ティーボーである。技術的にはダメダメなのは素人目にはこれはハッキリしていたけれども、少なくとも結果は出していた。デンバーがリリースし、マニングに賭けたのも、いまだに理解できないし、その後、どのチームからもチャンスを与えられなかったのは、もっと理解できない。

 そのほか、思いつくままに挙げれば、ブラウンズにいたウィーデンなんかも、まあプロボウル級かと問われれば疑問であるが、十分スタータークラスだと思ったし、このライナートの後輩マーク・サンチェスなんかも、一定の結果を出したにもかかわらず、ケガで戦列を離れると、それっきり帰ってこない。ブリッジウォーターも同じ憂き目である。
 また、マット・フリンなんかも、彼等とは事情はちょいと異なるが、ラッセル・ウィルソンに負けたのはともかく、あれだけの争奪戦がありながら、その後どこからもチャンスを与えれず、結局バックアップ戻りというのも理解しがたい。まあ、地球の裏側から見ているだけだから、お前は何にも分かっていないと言われれば、それまでかもしれないが。

 ことほど左様にQBの評価は難しい。

 さて、ここでちょいと話は変わるが、上記のスカウティングレポートの弱点の項目の最後に「彼のブラインドサイドを守るために、そのプロテクトを右側に回すオフェンスが要求される。」という一文がある。

 この一文で私がちょいと思ったのは、最近、左利きのQBがめっきり減ったなあという事である。一昔前は、このライナートの他にも、先のティーボーとか、ヴィックとか、マーク・ブリュネルとか、もうちょっと前だと、それこそスティーブ・ヤングとか、数多くでは無論ないが、それなりにいた。しかし今や、ほとんど絶滅危惧種である。現役の左利きQBはパッと思いつかない。単に私が知らないだけかもしれないが。

 かつて、私は私の嫌いなQBの3条件として、1.スクランブルQB、2.チビ、3.左利き、の3つを挙げた事がある。ちなみに、マイケル・ヴィック様はすべて当てはまっているのであるが、それはともかくとして、1番と2番の理由は割愛するが、3番の左利きを嫌う理由として、私の書いたのは、「左利きQBの投げるボールは逆回転になるので、レシーバーが捕りづらい。」である。

 まあ、、もちろんプロなのだから、左利きの投げる逆回転も練習して捕れるようにしろよ、という話なのではあるが、エースレシーバーはともかくとして、このFA・サラリーキャップ時代において、レシーバー陣を5年10年そのまま維持するのはなかなかに難しい。どうしても、とっかえひっかえになる。と、そこで左利きQBのボールに合わせるのはレシーバーの負担ではないか、みたいなことを私は理由に挙げた。記憶がある。たぶん。

 そうして、もうひとつ、左利きが疎まれる理由が、これは私は指摘しなかったけれども、このスカウティングレポートにある「彼のブラインドサイドを守るために、そのプロテクトを右側に回すオフェンスが要求される。」である。

 単純に考えれば、右と左を逆転させれば良い訳だけど、LT、LG、RG、RT、それぞれ慣れがあるだろうから、そのコンバートは簡単にいかないだろうし、そうして、そのコンバートに合わせて、敵チームも右と左を逆転してくれればよいが、数少ない左利きQBのチームのためにそんな事はしないだろう。すると、こちらのパスプロ苦手のストロングサイド用LTが敵のチームのナンバー1パスラッシャーと対峙するというシチュエーションになってしまう。それを避けるために、こちらのパスプロ名人のRTを左に、って、もう訳が分からなくなる。

 この手のややこしさも敬遠されて、左利きQBは減っているのだと思う。まあ、最近はパスラッシュのスキームが複雑化の一途なので、この手の配慮は不要なのかもしれないが。

 ちなみに、これはまったくもって、どーでもよい情報なのであるが、前述したジョセフ・アダイは左利き、つうか左投げだったりする。一度、なんかのトリックプレイの時、左で投げてた。記憶がある。たぶん。

 以上、ライナートはこんな感じかな。当初の目的だったジョシュ・ローゼンやサム・ダーノルドの比較は、よく分かりませんでした。あまり共通項は無いようである。

 次回第3弾は、バスト界の王の座を、あのライアン・リーフから強奪したジャマーカス・ラッセルを予定しておりま〜す。

                                       2018/6/1(金)
 つー訳で、第3弾はバスト王を争う男、ジャマーカス・ラッセルである。テキストは毎度おなじみプロフットボール・ウィークリー・ドラフトガイド2007年版である。


 ジャマーカス・ラッセル QB LSU 6−6 260パウンド 40ヤード:4.75

 【長所】
 たぐいまれな体格と強肩を兼ね備えている。ほとんどのディフェンシブ・エンドよりも大きく、パスラッシュを払い除ける事が出来る。肩は強く、今ドラフトではベストであり、ボールをタイトウィンドウに通し、ゾーンを切り裂き、ほとんどフィールドの端まで投げる事ができる。ボールを軽く弾くようなナチュラル・スローアーである。あらゆるNFLのスローが出来る。オフバランスでも、後ろに下がりながら、自分の体と逆に投げられる。際立って素早く投げる。スターターとしてキャリア25勝4敗、勝者である。フォロースルーも良い。スピードを上げつつ、荷を下ろし、素早く立ち去る事が出来る(原文は、「Can piuk up speed and be a load to bring down once he gets moving.」。正直、意味が良く取れない。)。ポケット内で非常に堅牢であり、ビッグヒットを喰らっても、バランスを維持しつつ、ボールを放つ。

 【短所】
 よりタッチのある投法を学ばねばならない。フットワークは特別優れている訳ではなく、強肩に頼りがちであり、タイトスポットにボールをねじ込もうとする悪い癖がある。フットボールのケアをもっと高めねばならない。そのグリップは緩みがちである。予想やタイミングがいまひとつであり、クロッシングルートでレシーバーの後ろに投げてしまう。プレッシャーに対する感度もいまいちであり、ボールを長く持ちがちである。練習熱心とはいえず、QBというポジションで成功するに足るだけの精神的な洗練はないようである。

 【結論】
 今ドラフトで最も先天的な才能に富んだクォーターバックであるラッセルはレイダースのような垂直的パッシングゲームには極めてフィットするであろう。しかしながら、NFLのオフェンスに順応するには幾許かの時間が必要であり、ゆっくり成長する必要もあろう。ブーム・オア・バスト型。


 いや、合っとるがな。正確無比だよ。完璧だよ。ラッセルがバストだった大きな要因とされている「練習嫌い」もきっちり指摘されとるし。入るチームまで合っとるわ

 本来この稿の主旨は、「ドラフト時の評価は全然当てにならない」だった筈なのに、アダイといい、このラッセルといい、正確無比だよ、完璧だよ。合っているよ。合ってますよ。NFLファンのみなさ〜ん、ドラフト時のスカウティングレポートは、そのまま信じていいですよ〜。鵜呑みにしていいですよ。

 また、もちろん、ここまでの3者、アダイ、ライナート、ラッセルは、私が全く恣意的に気ままに選んだものであり、スカウティングレポートが正確なのを特出した訳では無い。念のため。

 さて、ここらでラッセル篇最大のテーマの討議に移ろうと思う。で、それは何かというと、無論、「リーフとラッセル、バスト王はどっちだ」である。

 パッと考えると、マニングと争ったという強烈無比なストーリーラインを持つライアン・リーフの方が有利な気もするが、ただ如何せん、リーフは2位である。マニングと争って1位、だったら、バスト王の座はまず揺るがないであろうが、結局2位というのは、オチとしてはパンチ不足である。まあ勿論、リーフが1位でバストだったら、私はこんなところで余裕ぶっこいてコルツファンしている場合ではないのであるが、それはともかく、やはり2位ではパンチ不足ではある。結局、ポリアンは選ばなかった訳であるから、そうして、サンディエゴは(誰がGMだったかは知らんけど、)、QBがニーズである以上、仕方なしに選んだ、つーか選ばされたのであるから。

 ちなみに、この年、1998年のドラフトで、リーフの後に指名されたQBはというと、2巡60位でチャーリー・バッチ、3巡86位でジョナサン・クイン、同じく3巡91位でブライアン・グリーシーという結構微妙、つーか微妙過ぎるメンツである。リーフvsバッチvsグリーシーの三者択一って、誰も選べねーよ。全員敗者だよ。全部ハズレだよ。悪魔の駄菓子屋だよ。

 ちなみに、この年、1998年のドラフトで、マニング以外で唯一のアタリはというと、コルツファンにもお馴染み、マット・ハッセルベック6巡187位だったりする。思わぬところにアタリがいるものである。まあ、コーチとチームに恵まれたという側面も無くはないが。

 一方、2007年のドラフトのラッセルの対抗馬のQBというと、ブレディ・クイン、トレント・エドワーズ、トロイ・スミス、ケビン・コーブと結構しょぼいメンツである。この中で一人、それも全体1位で誰かといえば、消去法的にラッセルに行ってしまうのもやむを得ないと思う。そういった意味では、この指名でアル・デービスを責めるのは酷ではあろう。

 と、言いたいところであるが、この2007年ドラフト、QB以外は結構もの凄いメンツなのである。エゲツナイといっても良いくらいなのである。

 まず、全体2位がカルビン・ジョンソン、3位がジョー・トーマス、7位がエイドリアン・ピーターソン、11位がパトリック・ウィルス、14位がダレル・リービス、2巡37位でエリック・ウェデル、59位でライアン・カリルといった、オールプロ級どころか、その後の10年間を代表するような、すなわちデケードでのオールプロがゴロゴロしているような年なのである。そのほかにも、マショーン・リンチとかローレンス・ティモンズとかマイケル・グリフィンとかジョー・ステイリーとかラマー・ウッドリーとか、プロボウル級オールプロ級がゴロゴロしている年なのである。(ちなみに、この年、我らがコルツは、ゴンザレスとウーゴ―、とほほ。)

 しかし、それらを差し置いて、全体1位でジャマーカス・ラッセル。はい、バスト王決定。軍配を上げざるを得ない。

 私は、この記事を書くまで、この年2007年が空前の当たり年だとは気づいていなかった。単に私がマヌケ野郎というだけかもしれないが、ひとつ自己弁護させてもらえるならば、全体1位がジャマーカス・ラッセルだった云う事も、この年の当たり年感を弱める大きな要因になっていたのではないだろうか。
 仮にこれが、1位カルビン・ジョンソン、2位ジョー・トーマス、3位エイドリアン・ピーターソンで、ジャマーカス・ラッセルが6位くらいだったらプレミア感がハンパ無かったのではないだろうか。

 日本のプロ野球の空前のドラフト当たり年といえば、無論、1989年の野茂ドラフトで決まりだろうが、もしこの年の8球団競合が、野茂ではなく、大森や元木だったら、あるいは小池だったら、当たり年感は半減してしまったと思う。

 そういった意味では、この2007年の当たり年感を大きく半減させたジャマーカス・ラッセル、バスト王は君に決めた。

 次回は、このラッセルのバストメイト、ダリアス・ヘイワード=ベイを予定しておりま〜す。

                                      2018/6/20(水)

 このヘイワード=ベイ編も過去3回と同じくRFWのドラフトガイド誌をテキストにと考えていたのであるが、ねーの。探しても、見つかんねーの。唯一見つかったのが、スポルティングニュースのドラフトガイド誌であるので、今回は趣を変えて、つーか変えさせられて、スポルティングニュースのドラフトガイド誌をテキストに、ベイ編を繰り広げたいと思う。


 ダリアス・ヘイワード=ベイ WR メリーランド 6−2 206パウンド 40ヤード:4.51 ファイナルグレード:7.5

 比較対象:チャド・オチョシンコ ベンガルズ

 ハンド:天性のハンドがある。時々、集中力を欠いて、落球する。ジャンプボール・バトルを積極的に争わない。グレード:6.5

 パターン:鋭く正確なルートを走る能力はフラッシュ的である。。時に、素早いカットでインやアウトを取るのに苦労する。ディフェンダーからセパレートするフットワークを見せる。ボールからコーナーバックを守り遮る体格と体力がある。グレード:6.5

 ラン・アフター・キャッチ:キャッチ後はデンジャラスランナーであり合法的タッチダウンスレッドである。俊敏であり、素早くフィールドから飛び出せる。方向転換も早く、タックルミスを誘う。グレード:8.0

 リリース:ボールのスナップ時の動きは速く、コーナーバックとのクッションを素早く縮める。ジャムを制する体格、体力、素早いハンド、運動能力を持つ。グレード:6.5

 ブロッキング:ブロッカーとして十分な努力を示すが、積極的にブロックはせず、彼のブロックを常にフィニッシュする訳では無い。担当プレイヤーをプレイから外しはするものの、その動きを封じる事はない。グレード:6.5

 結論:ヘイワード=ベイというジュニアは今ドラフトの第一レシーバーの一人と目されている。NFLにおける合法的ビッグプレイスレッドになるだけの肉体的条件を持っていることに疑いは無い。しかしながら、エリートにランクされるためにはルートランニング技術の向上が必須である。


 てな感じである。どうでしょう。多少いつもと、すなわちPFWとは趣が異なるでしょう。技術的な指摘が細かいのがTSNの特長であるが、反面、技術面以外はあまり言及しないという弱みもある。
 ちなみに、「合法的」と訳したのは原文では「legitimate」であり、意訳、あるいはより日本語的な表現であれば、「正統派の」「正真正銘」ぐらいであろうが、面白いので直訳的に訳してみた。細かく突っ込まないよーに。


 さて、問題のヘイワード=ベイであるが、ライナートやラッセルと違って、ヘイワード=ベイはコルツに在籍した時期もあるので、レイダースファンは無論の事、コルツファン的にもより分かり易いであろう。とにかく最後の一行「しかしながら、エリートにランクされるためにはルートランニング技術の向上が必須である。」に尽きる。

 一部で、ワイドレシーバーならぬ、ワイドランナーと揶揄されていたぐらいであるように、とにかくベイはルートランニングが出来なかった。ただ直線的に走っているだけで、曲がったり止まったりが出来ない、所謂ミニ4駆野郎である。結果、ハンドが悪く、いつも常にポロポロしていた。ウェインが苦虫を噛み潰したように睨んでいたのを私は懐かしく思い出す。私がQBだったら絶対投げたくないタイプのワイドレシーバー、つかワイドランナーである。

 とにかくハンドキャッチができないのだもの、常に胸で捕ろうとするのだもの、そりゃ捕れんわな。このスカウティングレポートにある「天性のハンド」という表現は、いかにも皮肉的である。

 また、このスカウティングレポートが失念しているポイントとして、スペシャルチーマー、すなわちガンナーとしては結構優秀という点がある。まあ、レシーバー能力じゃないけど。レシーバーとしては全然だけど、結構長くNFLに踏ん張っているのはガンナーとして評価が高いからであろう。只今、ベイさんはスティーラーズ在籍4年、2018年に続けて在籍ならば5年になるが、いかにもスティーラーズが好きそうなタイプのスペシャルチーマーではある。コルツ時代も、ガンナーとしては優秀だった。まさしくワイドランナー。そうして、全体7位指名。

 この2009年のドラフトはラッセル輩先の2007年とは違って、どっちかというとハズレ年感が強い。上位指名陣では、全体1位のスタッフォードはともかく、2位のジェイソン・スミス以下バスト、あるいは許容範囲バストが続く。当たりは13位のオラクポまで待たねばならない。あと、10位のクラブツリー。そう、この年は、他のポジションはともかくWRは豊作の年だったのである。10位がクラブツリー、19位がジェレミー・マックリン、22位がパーシー・ハーヴィン、29位がハキーム・ニックス、30位がケニー・ブリット。
 ちなみに、我らがコルツは4巡127位で、あの懐かしいオースティン・コリーを指名しており、そうして、あの憎たらしいペッツは7巡232位でジュリアン・エデルマンを指名しとる。そうして、このエデルマン、TSNのドラフトガイド誌には記載ねーし。

 そうした面々を差し置いて、全体7位でダリアス・ヘイワード=ベイ。前回、私はラッセルの指名でアル・デービスは責められない、致し方ない面もあると書いたけれども、この指名ははっきりアル・デービスに罪がある。このTSNのドラフトガイド誌でも、WRでは全体7番目2巡指名を予想している。そのプレイヤーを全体7位って、しかもバスト。これは罪深い。しかも、ドラフトガイド誌が指摘していたベイの欠点は、そっくりそのまま現実だし。

 ちなみに、私は、このヘイワード=ベイも同カテゴリーに入るかと思われるが、この手の体力型大型レシーバーはあまり好きではない。私がNFLを見始めてから15年以上経ち、その間ずっと、この手のレシーバーは尊重され続けているけれども、その成功例はほとんど無いと思う。その昔、ジャガーズが、ただデカいというだけの理由でマット・ジョーンズを指名して、大失敗しているけれども、その過ちは今でも続いていると思う。ちなみに、このマット・ジョーンズ、私のMADDENではウェインの反対側で結構活躍した。

 私のMADDEN話はともかくとして、この手の大型高速レシーバーは、このベイのスカウティングレポートにもあるように、「合法的ビッグプレイスレッド」と期待されての高順位と相成る訳だけど、大概失敗する。だって、ボールが捕れないのだもの。このヘイワード=ベイは、その典型的な見本であろう。

 その元祖にして最高到達点であろうランディ・モスの幻影を追っての高順位指名なのだろうけれど、モスは特注品である。一品物である。WR界のマイケル・ジョーダンである。その幻影は追いかけない方がいい。
 レシーバーはルートランニング重視ハンド重視のポリアン方式が永遠の正解だと思う。2018年のドラフトで、この手の大型高速レシーバーが軒並み順位を落としたのは、ようやくこの愚にNFL全体が気付いてきたからだと思う。

 つう訳で、次回はルートランニング重視ハンド重視のWRの成功例、ジョディ・ネルソンについて記事を書きたいと思う。しかし、PFWのドラフトガイド2009はどこへ行った〜。買ってたと思うんだけどな〜。クラブツリーの記事を読んだ記憶があるし。

                                      2018/7/12(木)

 前回、ダリアス・ヘイワード=ベイの記事で、「ないない」とブルマと出会った頃の悟空のように騒いでいたPFWのドラフトガイド2009であるが、なんと元々購入していなかったことが発覚した。掲示板にて、「みらー」さんが当サイトの過去の記事を読んで、僕に教えてくれた。ありがとう、「みらー」さん、僕は所持していないものを永遠に探し続けるところでした。つかまあ、自分の過去の記事くらいチェックしろよって話ではあるが。反省。でも、しつこいようだが、クラブツリーの記事を読んだような気がするのである。あれは夢だったのか。いよいよ夢と現実の区別がつかなくなってきているのか。もう完全に「終わりのおっさん」ですな。

 しかしまあ、「所持していないものを永遠に探し続ける」っていうのは一概にマイナスばかりではない訳で、今回も色々とフットボール関連の雑誌を漁っているうちに、面白い記事を見つけた。スポルティングニュースのカレッジフットボールのプレビュー誌2014年版にハイスクールのオールアメリカンの記事があった。なんと、そこに今ドラフトで我らがコルツが4巡104位で指名したネイハイム・ハインズの名があった。しかも、ファーストチーム。もっとも、ポジションは「ATH」というよく分からんポジションではあるが。おそらく、WRとRB、そうしてリターナーも含めたオールパーポーズのカテゴリーなのであろう。コルツファン的には、ちと嬉しい。
 ちなみに、同じくファーストチームのDBではミンカ―・フィッツパトリックが選ばれていた。また、ちなみに、セカンドチームのQBはジョシュ・ローゼンなのであったのであった。と書くと、ファーストチームのQBは、という話に当然なるのであるが、それを伏せて意地悪するのも悪くない心持ちであるが、そこまで底意地悪いのもどうかと思うので、名前を書くと、「カイラ―・マレー」。って、誰。興味のある方は各自お調べ下さい。綴りは「Kyler Murray」です。

 また、今回の「PFWのドラフトガイド2009架空紛失事件」を機に、今まで押し入れに、それこそ押し入れていたフットボール関連の雑誌を出版社別年度別にきれいに本棚に並べてみた。いや〜壮観。所謂「整理されていない1万冊より整理されている何とやら」である。って、当たり前だっつーの。

 という訳で、愚かな行動の中にも美点はあるのですね〜、って無理矢理ポジティブシンキング。でも、ありがとう、「みらー」さん。指摘されなければ、僕は所持していないものを永久に探し続けるところでした。重ねて御礼申し上げます。

 さて、いよいよ本題のジョディ・ネルソンであるが、こちらは安心と信頼のプロフットボール・ウィークリー・ドラフトガイド2008年度版でお送りしたい。


 ジョディ・ネルソン WR カンザス・ステイト 6−2 215パウンド 40ヤード:4.52

 【長所】
 優れた体格、骨太な体格、そうしてキャリアを通じての耐久性。際立つハンド。キャッチ後に更なるヤードを創出する。良好なランバランス、強さ、本能。フィールド全体でタフな仕事ぶりを見せる。効果的にスティックを動かし、サードダウンで更新する。優れたカットバック能力があり、ショートエリアでの爆発力がある。オープンフィールドでディフェンダーを揺さぶり、ショートキャッチをロングランに変える事ができる。パントリターナーとして数多くの長所があり、その機を活かした――シニア時代、5度のリターン機会で2度スコアしている。際立つ生産性。ケガしながらもプレイしようとする。フィールドでディフェンダーに警戒させるだけのスピードがある。堅実な性格であり、自分の娘と結婚させたいタイプの人間である。

 【短所】
 ブレイザーではない。すべてのルートツリーを走れる訳ではなく、ルートの乗り降りの出来るところを示してはいず、ディフェンダーを置いてけぼりにする方法をプロで身に付ける必要がある。優れたブロッカーではない。

 【結論】
 セイフティからコンバードされると、シニア時代、スロットとして頭角を現した。ショートクロスルート、ディッグ、スクリーンやアウトなど素早くアップフィールドに向けるもので重用された。ゴールートではダウンフィールドを引き離すスピードを見せるものの、プロではより熟練したルートランナーになる必要があろう。


 てな感じであるが、まず意外だったというか、初めて知ったのは、ネルソンがセイフティからの転向組だったという事である。ワイドレシーバーらしからぬガッチリした体形だったので、おかしいなとは思っていたのであるが、そういう秘密があったのね。ちなみに、大学時代の背番号も27で、WRらしからぬ番号である。

 そういう経緯という訳でもないが、ヘイワード=ベイやその他多くのワイドレシーバーとは違って、直線的なスピードではなく、体格と細かな動きで勝負するタイプのレシーバーだったようであり、それはプロ入り後も変わらないように思う。

 さて、課題のルートランニング能力であるが、セイフティからの転向組という経緯もあってか、磨き抜かれたルートランニングとはいえないという評価である。ただ、その体格と動きに適したルートを与えられ、それを見事に活かしているという評価のように読める。

 その評価はプロ入り後も変わっていないと思う。また、実際、パッカーズも、今から思えば、彼に適したルートを与えていたように思う。上手い下手で云えば、もちろん上手いルートランナーであろうが、特別上手い、所謂サーベイ・ルートランナーかというと、そこまでの評価は、私にもない。ヘイワード=ベイよりは勿論上だけれども、ウェインやA.J.グリーンよりは下だし、ピエール・ギャルソンやダグ・ボールドウィンよりは下で、フリオ・ジョーンズよりは上だと思う。カルビン・ジョンソンと同格といった感じかもしれない。もちろん、これはあくまで私の見立てではあるけれど。

 で、ここで問題になってくるのは、そもそもルートランニングという技術は練習次第で上達するものなのかという事である。先に紹介したヘイワード=ベイをはじめ、「プロ入りしたら、ルートランニング技術の向上が必須である」みたいなスカウティングレポートは多々見るけれども、上手くなった事例を私はほとんど知らない。だいたい上手い奴は最初から上手いし、下手なのは、このヘイワード=ベイ同様、ずっと下手である。T.Y.ヒルトンが1年目に比べたら見違えたというのが唯一の事例のように思われる。まあ、あくまで私のごくささやかな見聞の範囲内の話ではあるけれど。

 ルートランニングの巧拙というと、これはあくまで私の印象だけれども、体格型運動能力型は総じて上手くない。先にちょいと触れた、カルビン・ジョンソンなども、私の目には上手いルートランナーには見えなかった。もちろん下手ではないけれども。もっとも、体の大きな選手の場合、どうしても動きが大雑把に見えるので、そういう風に見えてしまうのかもしれない。ちなみに、大型選手でルートランニングが上手かったのは、これはあくまで私の印象だけれども、プラシスコ・バレスである。あとまあ、勿論フィッツジェラルドなんかも当然上手い。

 また、一方で、これはかつてどこかで書いたように記憶しているけれども、体格的運動能力的に劣る選手、またドラフト順位の低い選手、無名校出身の選手は総じて上手い印象がある。これは、運動能力や体格で圧倒できない分、あるいはネームバリューが無い分、ルートランニングを真面目に練習した結果のようにも映る。たとえば、今回のネルソンなどは、セイフティからの転向組という事で、ルートランニングを熱心に練習したのかもしれない。と仮定すると、後天的な技能のようにも思う。

 一方で、先のヘイワード=ベイのように、ルートランニングが課題とされながら一向に上達しない選手も数多い。しかも、ベイの場合は、練習嫌いといった感じでもない。スペシャルチーマーとしての貢献振りやサイドラインでの様子から察するに真面目な選手だと推測する。と仮定すると、体の柔らかさとか俊敏性とかいった先天的な資質がものをいう技能なのかなとも思う。どちらなのでしょーか。

                           2018/7/28(土) 台風接近中

 Luck is Baaaaaaaack! 2018NFLも無事開幕し、あわせてラックも無事再始動したようで何よりであるが、当サイトはオフ企画「あの頃、君はこう見られていた。」をもうちっとだけ、正確には今回も含めてあと2回続けるのである。

 前回、いつもと違って次回予定選手を紹介しなかったので、前回のネルソンで打ち切りかと思っていた御仁、甘い。私はしつこいのである。世間のNFL開幕気分(プレシーズンだけどよ。)もどこ吹く風、まだオフ企画を継続するのであったのであった。

 つう訳で、今回はアンディ・ダルトンを取り上げてみたいと思う。ここまでQBは、ライナートにネルソンと期待されていた割にはバストだった二人を取り上げたので、この度は逆に期待は低かったが成功した事例を取り上げてみたい。で、次回は、期待されていないという訳では無いけれど、ジョー・フラッコーを取り上げて、このオフ企画「あの頃、君はこう見られていた。」を締めたいと思う。

 さて、テキストは通常通り安心と信頼のプロフットボール・ウィークリー・ドラフトガイドを使用したいところなのであるが、このダルトンのエントリーした2011年度版は、いつもと体裁が違ってスカウティングレポートが箇条書き風味なので、いまいち面白みがない。風情が無い。そこで今回は不安と不信のスポルティングニュース・ドラフトガイド2011年度版を使用したい。


 アンディ・ダルトン QB テキサス・キリスト教大学 
           6−2 213パウンド 40ヤード:4.95 ファイナルグレード:5.9

 【長所】
 脚と肩でビッグプレイを生み出す優れたアスリートである。パスラッシュを感じた時、サックを避けるための素早い脚とアスレチズムがあり、セカンドチャンスを買いポケットから飛び出せる。また、プレッシャーを感じた時、逃げ出すスペースが無い場合、サックを避けるためにボールを投げ捨てようとする。NFLの全てのスローができるだけの肩の強さがある。ダウンフィールドに速度と正確性を以って20ヤード以上投げられるところを見せる。パスするためのドロップバックは非常に素早く、ショート「アウト」ルートにボールを素早く投げるために後ろ脚をしっかり固定出来る。ポケットから出た時、動きながら正確に投げられる。NFLのオフェンスやパッシング・スキームを学ぶ事のできる賢い若者である。

 【短所】
 クイックリリースではあるものの、動きの始動時にわずかに後ろに下がってしまうのは問題である。というのも、それはディフェンダーにダウンフィールドへのパスをいち早く察知されてしまうからである。投球の際にストライドしないと正確性が犠牲になり、時折、早くパスをしてしまうために、レシーバーの後ろにボールを落としてしまう事がある。センターからのドロップバックに対応する必要があり、その体得により、速く正確に投げられるようになるだろう。

 【結論】
 ダルトンには、スターターが務まるだけの優れた成長型QBプロスペクトであるだけの多くの才能があるものの、シニアボウルでの練習中、アンダーセンターでのプレイに苦労し(とりわけ、パスドロップ後の強く正確なスロー)、彼の成長にはいくらか時間が掛かると見られるようになった。ダルトンに3巡までの指名価値はない。スターターQBが務まるための準備が不足しているからである。しかしながら、4巡では非常に価値あるピックとなるであろう。なぜなら、彼にはNFLでスターターが務まるだけの有形無形の能力や知性が備わっているからである。


 一読して思うのは、この筆者の主張するように「3巡と4巡のピックにそこまでの差があるのか。」であるが、それはこの論考とはまた別問題なので、いずれ時宜を経て考えてみたい。

 で、本題のダルトンについてであるが、まず意外だったのは、このスカウティングレポートでは、どちらかというとアスリートタイプのQBと見られていて、ポケットタイプのQBとは見られていないという事である。動きながらのパスは評価されながら、一方、アンダーセンターのドロップバックなどは課題と見られている。

 私は何度か書いているがルーキーQBで最も印象的だったのはウェンツで、次点がこのダルトンである(ラックは特殊な例外)。では、何故に好印象だったかというと、おそらく、私の事だから、フットワークと判断力を評価したのだと思う。興味のある方は、当時の記事をご参照ください(って、お前も読めよ。)。違う事を書いていたら、ゴメンナサイ。

 ただまあ、どう考えてみてもアスリートタイプではなかったし、実際アスリートタイプではないし、このスカウティングレポートは的外れという感もなくもない。まあ、もっとも純正ポケットパサーというタイプでもないので、ある程度動けるという点ではアスリートタイプといっても良いのかもしれない。しかし、このスカウティングレポートを読んでいると、何だかラッセル・ウィルソンのそれを読んでいるような気もしてくる。

 ただ、いずれにしても、4巡評価なので当然ながらトーンは低い。まあ、コテコテのバックアップQBという評価では無いが、コーチングや当人のガンバリ次第でスターターもありますよ〜というぐらいのトーンではある。どっちに転がっても、筆者が傷付かないような書き方をしているとも言えなくはないが。

 ちなみに、安心と信頼のプロフットボール・ウィークリー・ドラフトガイドでは、ダルトンをアスリートタイプとは見ておらず、むしろ運動能力的には平凡であるが(肩は十分にあると見ている。)、知性と根性で何とかするタイプであり、バックアップQBとしては10年固いと見ている。そうして、WCOタイプであるともキッチリ指摘している。このへんは、さすがPFWであるが、スターターとしてのポテンシャルは指摘していないので、この勝負は引き分けといったところか。

 しかしながら、スポルティングニュースだけ全文訳出して、プロフットボール・ウィークリーは訳出しないのも、何だか不公平な気がしてきたので、今回は大サービスでプロフットボール・ウィークリーのスカウティングレポートも訳出しよう。


 アンディ・ダルトン QB テキサス・キリスト教大学 背番号14 6−2 213パウンド
              40ヤード:4.96 腕:31と1/2 手:9と3/4 年齢:23

 【長所】
 ・賢くタフで熱心なフィルムジャンキー
 ・仕事に誇りを持っている
 ・優れた無形の力を持った強力なリーダーである
 ・肩の動きがなめらか
 ・十分な肩
 ・経験豊富な4年スターター

 【短所】
 ・平均的な運動能力と脚のクイックネス
 ・先読みが極めて機械的
 ・ダウンフィールドでの正確性が欠如している
 ・「Didn't set protections or make progressions」とあるが、意味が良く取れません。
 ・長所に上限がある

 【結論】
 知性的であり仕事熱心、ハーフフィールドのディンク・アンド・ダンク(dink-and-dunk)パサーであり、彼の真面目な性格は肉体的上限に打ち勝ち得るであろうし、ウェストコースト・オフェンス・システムの10年バックアップに成り得るであろう。


 とまあ、こんな調子で、例年と違って、箇条書き様式なのがこの年のPFWのドラフトガイドの特徴なのであるが、不評だったのか、翌年からかどうかは忘れたが、現在は元の様式に戻っとる。

 そんなPFWの編集方針はともかくとして、このダルトンのスカウティングレポートはPFW、TSN両者の見立ての相違が良く出ていると思う。精神的なものを重視するのがPFWであり、肉体的なものを重視するのがTSNなのである。

 しかしまあ、今回のダルトンに関しては、さすがにPFWに軍配は上がっていると思う。まあ、バックアップ止まりという予想は完全に外れてしまったが、QBとしての特徴はPFWのスカウティングレポート通りであろう。ダウンフィールドの正確性に関しては、そんなにシンシイのゲームを見ていない私では判定しかねる。

 ただし、このダルトンの件に関して、スポルティングニュース・ドラフトガイドで特筆すべきは、「MOST UNDERRATED PLAYERS」という一コーナーの第1位、すなわち最も過小評価されているプレイヤーに、このアンディ・ダルトンをランクしているのである。これには正直驚いた。ちなみに、第3位はJ.J.ワットだったりする。一方、過大評価の第1位はライアン・マレットだったりする。私も過大評価していました。スミマセン。

 とはいうものの、両者ともにダルトンの評価は4巡であっただけに、そういう選手を2巡35位で敢然と指名し、しかもモノにしてしまったシンシナティ関係者諸氏には敬服するよりほかはない。お見事でした。しかも、1巡4位でA.J.グリーンを指名しているのだから、シンシイ的には忘れがたいドラフトイヤーになったろう。

 また、この年は翌2012年にアンドリュー・ラックがエントリーするという点も考慮しなければならない為、QB指名は例年よりさらに難しい条件が加わっていたのである。そうした条件下で、この2巡35位でダルトンを当てたシンシイは立派としか言いようがない。
 勿論、全体1位でニュートンを当てたキャロライナも同様である。全体1位という事も加味すれば、シンシイより立派といえるかもしれない。私がGMだったら、ボン・ミラーかA.J.グリーンに行って、翌年のラックに賭けていたと思う。

 ちなみに、この2011年ドラフトにエントリーしていたQBはというと、先に挙げたマレット、ニュートンの他には、ブレイン・ギャバート、ジェイク・ロッカー、コリン・キャパニック、クリスチャン・ポンダー、タイロッド・テイラー、T.J.イェーツ、スコット・トルツェンという、例年通り、微妙なメンツ。
 で、結果的には、当たりはニュートン、ダルトンの二人だけ(キャパニック、テイラーをどう見るかという問題はあるが、)、いかにQBの指名が難しいかという事の数多い証左の一つであろう。

 しかも、この年はQB以外のポジションの上位指名が軒並み当たりだっただけに、8位ロッカー、10位ギャバート、12位ポンダーあたりは見ていて、本当にツライ。当該チームのファンの皆様、心中お察し致します。しかも、11位はJ.J.ワット。

 と、無理矢理、話題をワットに変えるのであるが、この年最大のヒットは、やはり何と言っても、このJ.J.ワットだと思う。長期的に見たら、ボン・ミラーやA.J.グリーン、フリオ・ジョーンズ、パトリック・ピーターソン、タイロン・スミス、ライアン・ケリガン、キャメロン・ジョーダン、キャメロン・ヘイワード等々の名前も挙がるのであろうが、短期的なインパクトでは、やはり何と言っても、J.J.ワットだったと思う。

 でも、このJ.J.ワット、当時のドラフトガイド誌を見ると、案外評価は高くない。PFWのDE枠では4番目、TSNでは何と10番目に位置付けられている。ここにOLBでカテゴライズされているボン・ミラーやジャスティン・ヒューストンあたりも加えると、所謂エッジラッシャー枠ではかなり低いランク付けになっていたと思う。しかも、PFW、TSNともに、どっちかつうと、パスラッシャーというよりはラン止め要員扱いだし。

 そういう選手を全体11位で敢然と指名して、ディフェンシブプレイヤー・オブ・ザ・イヤー3回、テキサンズは見事としか言いようがない。

 でもまあ、この2011年ドラフト最大の注目株は、やはり何と言っても、アンドリュー・ラック、つうかアンドリュー・ラックの動向だった訳であるが、まさか、その翌年我らがコルツが全体1位で指名するとは、当時の私は露ほども思わなかったなあ。つかまあ、そんなことを予言できるのは、世界中で、エジプトの占い師だけだったろう。

                                      2018/8/14(火)
 
 ズルズルズルズルズルズルと3ヶ月以上も続けてきたこの企画も今回のジョー・フラッコー編で最終回である。つかもう、開幕もすぐそこだし。ズルズルとオフ企画で遊んでいる訳にもいくまい。テキストは、お馴染み安心と信頼のプロフットボール・ウィークリー・ドラフトガイド2008年度版である。


 ジョー・フラッコー QB デラウェア大学 シニア 背番号5
             6−6 232パウンド 40ヤード:4.95

 【長所】
 理想的な体格と身長。レンガの壁にウェットティッシュを投げ、ディープアウトやカンバック、ディグルートも行ける。ボールは、あたかも高速でJUGSマシーンから撃ち出されたかのように、彼の手から放たれる。きつい高速スパイラルを投げる。ポケット内では我慢強く落ち着いており、平衡を失わない気質であり、悪いボールを投げても、タンクに行かない。正確性は良い。

 【短所】
 背が高すぎて、動く姿はおよそ不格好である。プレイアクションは売らない。足は速くなく、ポケット内で足を動かし移動せざるえない場合、彼は混乱する。回避能力は低い。走りながら投げる事はほとんど無く、その際は正確性を失う。ボールに力を与えようとして、後ろ足がおろそかになる。トップレベルの競争に直面した事が無い。ボーカルリーダーではない。リリースは不安定である。前足を開かず、彼の体を交差して投げるために、結果としてボールは上ずりがちになる。予測は平均的であり、レシーバーがアンカバーになるまで投げるのを待っている。

 【結論】
 最大の長所はその並外れた強肩であるが、ショートパス多用のハイパーセンテージ・オフェンスで彼を活用しようとすると、彼のビッグガンが常時使われなくなってしまう。機能させるためには、常に強力なオフェンスラインとサポーティングキャストが必要となる。


 とまあ、こんな調子であるが、ザックリ云えば、体格と肩の強さ、コントロールは合格点であるが、機動力やリーダーシップ等には不安が残るといったところであろう。

 まあ、まったくその通りであろう。また、ジョー・クールと揶揄されるような側面もすでに指摘されている。

 このスカウティングレポートで特徴的なのは、長所よりも短所の方が多いという点である。ここまで、この「あの頃、君は」のコーナーで紹介してきた選手では初めてのケースである。2巡3巡予想のプレイヤーなので当然といえば当然ではあるが。この年の目玉のQBマット・ライアンが、ここでは訳出しないが、絶賛の嵐であるのとは、いかにも対照的である。

 フラッコーは、このスカウティングレポートを読む限り、というか実際そういう選手なのであるが、典型的なラストピースのQBであり、マット・ライアンのようなファーストピースのQBではない。そこを見切って、1巡18位という、かなりのリーチ気味で指名したオジー・ニューサムは、毎度のことながら、チーム状況、選手の能力・個性等々を正確に判断した的確な指名だったと思う。
 この年の他の指名候補のQBはというと、ライアン、フラッコー以外では、チャド・ヘニー、ブライアン・ブルーム、ジョシュ・ジョンソン、ケビン・オコネル、コルト・ブレナン等々といった、かなり微妙なメンツの中で、フラッコーを敢然と指名し、成功したというのは、いつもながらオジー・ニューサムさすがの眼力と賞賛せざる得ない。

 しかも、この年は、QB以外も結構微妙なメンツ、まあハズレとまではいわないがアタリでもないみたいなドラフトイヤーだったので、その中でフランチャイズQBをゲットしてしまうのだから、やはり、オジー・ニューサムは流石といわざるを得ない。

 ただ、私が思うのは、この年、オジー・ニューサムは、様々な検討の末、ジョー・フラッコーを指名した訳だけれど、、ここでチャド・ヘニーやブライアン・ブルームを指名しても、フラッコーと似たような結果になっていたのではないだろうか、という予想というか疑義である。まあ、埒の明かない妄想である事は重々承知しているけれども、そんな風に思ったりもする。フラッコーのスカウティングレポートの最後の一行にある「機能させるためには、常に強力なオフェンスラインとサポーティングキャストが必要となる。」とは、通常考えられている以上に意味深な一行であると思う。
 まあ、ダルトンなんかは、どこに行っても似たような活躍をしただろうけれども、他の多くのQB、またその他のポジションも含めて、どのチームに入るか、つうか、フットボール選手以外、この世のほとんどすべての人間にとっても、「どのような組織に所属するか」は人生を大きく左右する重大ポイントであろう。しかも、それはNFL選手同様、ほとんどすべての人間にとっても、完全に自分の自由になるものではない。

 そうして、この命題のNFL的な最大の疑問は無論、「トム・ブレイディがベリチックのいるペイトリオッツ以外のチームに入ったら」であろう。と書いて、ブレイディ&パッツファンを軽くイラつかせて、このジョー・フラッコーの回、すなわち「あの頃、君はこう見られていた。」の最終回を締めたいと思う。


 さて、長々長々長々長々長々長々と都合7回にわたってお送りしてきたこの企画「あの頃、君はこう見られていた。」であるが、7回やってみてわかったのは、「結構あってんな。」って事である。TSNのダルトン評を除いては、あんまり的外れ感はなかった。細かい欠点なんかもキッチリ指摘されていることが多い。
 いずれも雑誌記者の仕事なので、NFL関係者のそれに比べれば、真剣度は落ちると思うが、やっぱりさすがに真面目にやっとる。みなさん、ドラフトレビュー誌や各スカウティングレポートは信用できます。

 とは言うものの、この企画全7回で取り上げた選手は、RB一名、QB四名、WR二名とオフェンスプレイヤー、それもスキルポジションに偏ってしまったので、他のポジションでは違う結論になるのかもしれない。来年あたり、余裕があったらディフェンス編やOL編、キッカー・パンター編をやってみたいと思う。ちなみに、スキルポジションに選手が偏ったのは、まったくの偶然です。少なくとも意識的に意図した訳ではありません。

 つう訳で以上、オフ企画「あの頃、君はこう見られていた。」を終了するが、やってて、結構楽しかった。何よりフットボールと英語、とりわけ英語の勉強になった。今までは、そうしておそらくこれからも同様だと思うが、分からない英語が出てきたらガンガン飛ばしてきたのであるが、まあさすがに訳出する以上、最低限の責任はあるので、最低限は調べた。やっぱり調べてみるものですね〜。いろいろな発見がありました。それが今企画、私にとって最大の収穫です。では皆さん、来年までサヨウナラ〜。って、ウソウソ。ゲームレビュー等々も書きます、すぐ書きます。

                                        2018/8/29(水)

 上記のジョディ・ネルソンの記事の冒頭で、「高校時代、ジョシュ・ローゼンを差し置いて、全米No.1QBと評価されていたカイラー・マレーって誰?」みたいな、とぼけた記事を私は書いていたのであるが、そのカイラー・マレー、なんと2018年度のハイズマン・ウィナーになりました。パチパチパチパチ〜。やっぱ、全米No.1QBって、さすがですね。カイラー・マレー世代の真打ち登場ですな。

 ちなみに大学はオクラホマ大学って事で、ピンとくる人はピンと来るであろうが、昨ドラフトのNo.1ピック、ベイカー・メイフィールドの後輩、つか後釜だったりする。このへんにも、ドラマがありますな〜。

 ハイズマン・ウィナーつう事で、来ドラフトの上位指名が約束されたりされなかったりする訳であるが、それ以前に、このカイラー・マレー、MLBのオークランド・アスレチックスに全体9位で指名されており、契約までしちゃっているらしい。こういう場合、どうなんの。

                                        2018/12/12(水)

<1/2/3/4/5/6/7/8/9/10/11/…>